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SRT

SRTプロトコルの基本

SRTプロトコルはカナダHaivision社によって開発されたオープンソースのビデオ伝送技術で、伝送機器、クラウド上に構築されたストリーミングサービス、ソフトトウエア、CDNといったIP伝送や配信などのサービスに広く採用され、これからのIPストリーミングを高性能・高品質にする基本プロトコルとなることが期待されています。以下にSRTについて説明します。

SRT(Secure Reliable Transport)とは

カナダのHaivision社が開発した画像伝送プロトコルです。不安定なネットワーク環境に強く、セキュリティの確保、容易なファイアウォール通過機能を持ち合わせながら、最高品質の画像伝送を可能にします。

以下の図は、サンプルビデオ信号が比較的低いパケットロス率によってどの程度劣化するかを示しています。
(映像伝送条件は、パケットロス2%で、H.264 UDPとH.264 SRTでは4Mbpsでの伝送、HEVC SRTでは2.7Mbpsでの伝送です)

この画像は4つの象限に分割され、エラーとエラー訂正システムがビデオ信号に及ぼす影響を示しています。ソースビデオ信号は左下に表示されます。左上の象限は、2%のパケットロス率によって引き起こされるビデオ劣化を示しており、図の右半分にある2つの画像は、2つの異なるビットレートで一般的に使用される2つのビデオコーデック(H.264ならびにHEVC)後の画像です。
SRTを使用することによって、画像劣化を防ぐことが可能となっています。

上記画像に関する動画は、SRTアライアンスのページで確認いただけます。 https://www.srtalliance.org/

なぜSRTが画像伝送に有用なのか?(リアルタイム画像転送を妨げる要素)

信号がある場所から別の場所に送信されるたびに、ビットエラーとパケットロスの影響を受けます。高品質ビデオ信号の場合において、これらのネットワーク障害は、インターネットを経由して一般的な損失率であっても、著しい画像の劣化を招くことがあります。管理されていないネットワーク(インターネット)上で高帯域幅、低レイテンシのビデオストリームを転送するためには、大量のパケット遅延変動(ジッター)を処理し、送信時に失われたパケット(パケットロス)を回復することが必要となります。SRTはこれらの課題を解決するために提示されている一つの方法です。

用語説明
  • パケットロス*:ルータによってパケットが破棄される
  • ジッター:パケットが到着するまでの時間が不定期
  • レイテンシ:送信から受信するまでの時間
  • 帯域:送受信間の通信に用いる周波数の範囲 広いほど速い伝送速度の通信が可能
*:各ネットワークで発生するパケットロスは、以下のように想定されます。
 < 0.001% MPLSネットワーク
 < 0.1% 建物内部
 < 0.5% 学校などのキャンパス内
 ~1% 公共インターネット (環境がいい場合)
 ~5% 公共インターネット (環境が悪い場合)

SRTの特長

パケットロスに対するリカバリ機能

SRTは、インターネット上で最も一般的なエラーを処理するために、ARQ(Automatic Repeat reQuest)を使用します。ARQを使用すると、受信者に到着しなかったパケットを送信者による再送信によって、これらのエラーを簡単に修正できます。ビットエラーを含むパケットが受信側に到着すると、それらは欠落したパケットとして扱われ、受信側はそれらを再送するように要求し、送信側はそれらを再送します。SRTはそれに追加して、各パケットに高精度のタイムスタンプを付加して、メディアストリームのタイミングを受信側で正確に再現できるようにしています。これにより、受信者側はビデオおよびオーディオ信号を適切にデコードできるようになります。

単純なネットワークでのエラーの発生
SRTによるネットワークでのエラーの解決

SRTセッション中に送信されるすべてのパケットは、オーバーヘッドが無く低遅延のパケット配信であるUDP(User Datagram Protocol)を使用します。ほとんどのリアルタイム画像配信は、安定した帯域を持ったネットワークを使用し、一定のスループットを担保されたパケット配信システムを提供するため、UDPを使用します。

ネットワーク遅延を処理

柔軟で適応性の高いバッファ管理システムにより、SRTは数ミリ秒から数秒間の遅延量を設定することができるため、プライベートネットワークからグローバルインターネットまで幅広いネットワークに対応することができます。

ビデオデータの暗号化

送信者と受信者の間で暗号化キーを交換し、ビデオデータを暗号化することができます。これらは、AES 128/192/256-bit Encryptionを使用してIPパケット内のビデオおよびオーディオコンテンツをスクランブルすることで、貴重なコンテンツを安全に送信することができます。

ファイアウォールトラバーサル機能

現在、企業などのネットワークシステムでは、インターネットの内外への無制限のアクセスが可能です。そのためファイアウォールが設置されており、外部からの攻撃にてPCやサーバーなどのプライベートネットワークデバイスを保護します。 SRTにて接続された機器はファイアウォールのセキュリティ機能を変更しなくても外部との接続を容易に実現可能です。

オープンソースプロトコル

SRTは、ハードウェアベースのポータブルソリューションとソフトウェアベースのクラウドソリューションの両方を含む、複数のプラットフォームとアーキテクチャに統合されたオープンソースのソリューションで、ロイヤリティフリーです。SRTオープンソースプロジェクトはSRTアライアンスによって管理されて、100以上の業界を牽引する開発者がコミュニティーにおいて新機能への対応を実施しています。

相互接続性

SRTを実装したすべてのシステムは同じ基礎となるコードベースにしているため、相互接続が容易です。

最高画像品質・最小レイテンシの実現

リアルタイムでネットワーク状態の監視

SRTの活用事例

SRTは2013年に開発されて以来、放送事業者やそれ以外の企業において活用されています。

  • アメリカのウォルト・ディズニー・カンパニー傘下のスポーツ専門チャンネルESPNは、従来の衛星アップリンクサービス使用する代わりに、低コストのインターネット接続を介して2,200以上のイベントを運営する14の大学アスレティックカンファレンスにSRTを搭載した装置を導入しました。
  • マイクロソフトでは、高価な専用データ回線や専用ビデオ回線の代わりに、ホテルや会議センターで低コストのインターネット接続を使用して、数百のプロ品質のライブビデオ制作にSRTを使用しています。
  • 欧州のヨーロッパ放送連合が運営するEurovisionは、ビデオ配信サービスの一環としてSRTを実装し、ヨーロッパの放送局にインターネット接続を使用した低レイテンシーライブビデオ配信を提供しました。
  • エリクソンは、放送事業者がライブコンテンツを収集し処理する分散型クラウドシステムでSRTを採用しました。

SRTの接続事例

ライブ配信システム構成 1

SRTを使用することで、IP網を通じて信頼性とリアルタイムを意識したシステムを構築可能です。(衛星回線からIP網へ変更し、ネットワーク費用を削減することが可能)

ライブ配信システム構成 2

AWS、Azure、アリババクラウドなどを使用したライブ配信システムをSRTにて構築することが可能です。リモート拠点にて撮影した映像配信は各別拠点においてSRT対応製品にて受信します。

DHCPサーバーとの接続方法

アクセス先がDHCPサーバーの場合、IPアドレス・ポート番号を指定することができません。この場合DHCPサーバー側の機器がSRT Callerモードとしてハンドシェイクすることにより容易に接続することが可能です。

①SRT Destination(Caller)がUDPパケットにてコントロールパケットを送りハンドシェイクを実施しにいく
②SRT Source(Listener)がコントロールパケットを受信し、接続を確保する
③ハンドシェイク確立後、UDPストリームにメディアデータを送信する

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